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【4月3日=バグダッド発 その21】

今日午後、ホテルの部屋で翻訳作業をしていたら、レセプションのスタッフ男性が部屋をノックする。何かと思ってドアを開けると、「いま米兵2人がレセプションに現れた。ここに泊まっている日本人がシェラトンホテルを撮影していたので注意しに来たという。部屋のベランダから入口ゲート付近を撮影するのも禁止だ」という。

シェラトンホテルとは、パレスチナホテルの向かいにある大きなホテルなのだが、いまはもう閉鎖されて「米兵駐留キャンプ」と化している。そして、ロビーまで来いと言われたので僕は断ったところ、もう一度部屋に来たレセプションの男は、「米兵から『今度部屋のベランダから撮影をしたら、予告なく銃撃するのであらかじめ通告しておく』と伝えろと言われた。くれぐれも気をつけてください」。

コワイのお~、米兵の人たちは。しかし、「脅し」じゃなくて「本当に撃つ」連中だからな。過去の実績多々あり。戸締り用心、火の用心。

さて、僕はまもなくバグダッドを離れる。
しかし、僕と違ってこちらにいる市民はいま様々な形で故郷を追われている。

2年前まで一緒に動いてくれたキリスト教徒の通訳の一人はすでにヨルダンに逃れ、親戚のいるスウェーデンへの難民申請をしているという。もう一人のクルド人通訳もイラク北部・クルド自治区へ「できれば移りたい」と話していた。今日こちらで偶然再会した知り合いのイラク人男性は、家族を最近バグダッドから離れさせたという。

地元メディアによると、現在イラクで25000人近くが「国内避難民」となっているという。バグダッドから南部バスラに逃れるシーア派の人たち、逆にイラク中部に逃れるスンニ派の人たちなど、様々な方面に逃れている。イラク赤新月社の提供で、テントが並ぶ避難民キャンプもバグダッド郊外にいくつかすでにあるが、多くは親戚を頼って逃れるので、こうしたテント生活ではない。実際の「避難民」の数はもっと多い。

いまイラクでは多くの人が「移動」を余儀なくされている。

周辺国を行き来する長距離タクシーの運転手に話を聞くと、「昨年アンマンで起きた爆弾テロ事件以来、ヨルダン国境のイミグレーションがイラク人に対して非常に厳しくなった。イミグレにヨルダンの情報機関員がいて、彼らはパスポート以外にも居住証明などのIDカードを要求する。だから国境で追い返されるイラク人も続出している。代わりにシリアに逃れる人がこのところ増えた」と話していた。

3年前、イラク戦争開戦直前に市民に話を聞いたら、「戦争が終わるまで家でじっと待つしかない。ほかにどんな方法があるんだ」と多くの人が話していた。当初予想された周辺国への脱出は非常に少なかった。後で聞くと、「一度逃れるともうイラクに帰ってこれないかもしれない」「家が略奪に遭って、誰かに占拠されるかもしれない」と話す人が多かった。当時は「家でじっと待つ」しかほとんど選択肢がなかった状況だった。

それが今では、多くの人が「国外脱出」を希望する。しかし、その多くの人は実際には「脱出」できない。

クラスター爆弾で右目を負傷したハディールの父・モハセンは、「こんな状況になるとは以前は想像もできませんでした。政府も、治安も何もない。午後8時になると「外出禁止令」ですが、それから殺し合いが始まる。イラクはもうおしまいです」と力なく話す。以前このブログでも書いたが、http://blog.so-net.ne.jp/watai/2006-03-25 彼らの住んでいるバグダッド南部ドーラ地区は、民家の襲撃や殺害事件が相次ぎ、バグダッド市内でも特に「危険な場所」と言われている。

先日ある方からのメールで「バグダッドはどれほど危ないのか?」という質問を受けたので、以下のような返事を書いた。

『その「どれほど危ないのか」が誰にも読めない状態です。「誰が、どこを、どんな理由で」狙われるのか、イラクの人たちでさえも予測できず、外国人だけでなく、イラク市民も非常におびえている。(後略)』

映画「Little Birds」の最後のシーンで、「大人は『もう戦争は終わった』というけれど、私にとっての戦争はまだ終わっていません」とハディールは言っている。

もう2年前になるが、ある講演で僕は答えに窮した質問があった。「いまイラクでは誰と誰が戦っているのでしょうか?」

「誰と誰?」
「誰が誰を?」
「どことどこ?」

バグダッドは紛れもなく、「闇の中の内戦」状態だ。


3年前のバグダッド陥落の際、フセイン元大統領の像が倒されたフィルドス広場周辺
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綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds~イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
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2006-04-04 01:09  nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 

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コメント 4

Akiko

 「リトルバーズ」のDVDを見ていると、3年前の映像が、ハディールちゃんの成長ぶりをこのブログで今回見たからか、遠い出来事のような気がしました。でもずっと、もっと苦しい日々が続いているのですね。あの時代の重要人物だったフセイン元大統領も、戦いの場からは姿を消しているのに、本当に「誰と誰」が、何のために、何を求めて戦っているんだろう、と思いました。
 綿井さん、お気をつけて戻ってきて、また私たちに伝えて下さい。
 
by Akiko (2006-04-04 22:43) 

田仁

今は確かに逃げた方がいいけど、イラクはおしまいじゃないです、また立ち上がりますよ。ベトナムだったって、そうじゃないですか。
by 田仁 (2006-04-05 12:48) 

Cheap Jordan Shoes

旅行は楽しい英語の学習のように、観光客、学生、教師は良いガイドでは、素晴らしい世界に指導するように変更すべきです。
by Cheap Jordan Shoes (2011-01-04 12:08) 

 Air Jordan Shoes

このお祝いの祝日で、——夢が叶った。
by Air Jordan Shoes (2011-01-05 09:36) 

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